久しぶりの帰省に戸惑う猫
コロナ禍でなかなか実家に帰省することもできなかったが、
制限なしの今年の夏、ようやく足を運ぶことができた。
玄関を開けて、「ただいま~」と大きな声をかけると
廊下にいた猫がビクッとし、大きな目でこちらを見た。
そして、私と目が合うと、さらに驚いたように横に飛び上がり、
その後はサササササーッとすり足で逃げていった。
数年、顔を合わせなかっただけでこれだ。
わが家の猫はかなりのビビリなのである。
それこそ、家族以外の人が来たらすぐさま存在を消し、
その後は何時間も出てこない。
こんな状況なので、たぶん、わが家に猫がいるとは誰も思わないだろう。
だから、私は猫に忘れられないようにとマメに顔を出していたのだが、
このコロナ禍である。
しかも、顔には大きなマスク。
薄々は予想していたが、まさかこれほどとは……。
結局、夜になっても引き籠りは続き、
この日は私と顔を合わせることは一度もなかった。
そして、次の日の朝。
目覚めた私の目に映ったのは、私の顔を覗き込む猫の顔だった。
「うわっ、びっくりした」
驚く私を尻目に、ようやく起きたのかといわんばかりに伸びをする猫。
そして、ついてこいとばかりに一声鳴き、ご飯のある場所へと誘導していく。
足元に絡みつきながら、早くご飯をくれとせがむ。
なるほど。どうやらいつもの場所で寝ている私を見て、ようやく認識したようだ。
しかし、思い出した途端、「ご飯をくれー」はないだろう。
認めたくはないが、やはり私は猫にとってただのご飯担当に過ぎないのだ。
ガッカリする気持ちと思い出してくれた喜びが複雑に交じり合いながら、
いつもより大盛にご飯をあげる。
これは家族には内緒だよ。
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