猫に選ばれる

私の友人は「猫に選ばれる人」だ。

ある日、2匹の猫と暮らす彼女の家の玄関先に、
見知らぬ猫が1匹佇んでいた。
彼女がドアを開くと、
その猫は「ここで合っている？」とばかりにずかずかと家に入り、
以前から住んでいたかのようにくつろぎ始めたそうだ。
先住ねこたちも突然の来訪猫に
最初は戸惑った様子だったが、いつの間にか毛づくろいを始め、
すんなりと新入り猫を受け入れたという。

そんな彼女は街はずれで小さな雑貨店を開いている。
今日ものんびりとお店をオープンしていると
換気のために開け放ったドアからお客さんがやってきた。

なんと、また猫だ。

その猫は口に何かを咥え、お店の中にずいずいと入ってきた。
「ねずみ？」と彼女は警戒したが、
よくよく見るとそれは産まれたばかりの小さな猫だった。
母猫は彼女の存在を気にする素振りもなく、
子猫をお店の奥に連れていき、その後、また外へ。
その後も小さな猫を咥えては、外とお店を往復する母猫。
総勢3匹の子猫をお店に連れてきた。

これにはさすがに彼女も唖然としたが、
小さな命を繋げようと母猫とともに子猫の世話に明け暮れた。
そう、彼女は決して命を見捨てない。

その後、子猫はすくすくと成長し、
無事に母猫も子猫も飼い主が決まって、
彼女は心から安堵していた。

きっと猫界で彼女は有名なのだろう。
「ここは絶対安全よ」って猫伝手に広まっているんだろうな。